訪問看護×熱中症対策|義務化された現場対応とは?

2025年6月1日、職場における熱中症対策が法律上の義務となりました。
これまで「努力義務」だった対応が、罰則を伴う明確な義務となったことで、訪問看護ステーションにも影響が広がっています。
本コラムでは、法改正の背景、訪問看護のリスク、現場での工夫まで、リアルな視点から解説します。
2025年6月、熱中症対策が義務化に。なぜ今なのか?
厚生労働省の発表によると、2024年には全国で職場における熱中症による死亡者が31人、4日以上休業した重症者が1257人と過去最多を記録。
多くのケースで、初期対応の遅れが命取りになっています。
これを受け、気温31度以上、または暑さ指数(WBGT)28以上の中で「1時間以上」または「1日4時間超」作業する職場において、以下のような体制整備が義務化されました。
・熱中症の兆候を報告する連絡体制の整備
・重症化を防ぐ手順書の作成と職員への周知
・高リスク者(高齢者、糖尿病・高血圧など)の配慮
つまり、訪問看護のような屋外移動・高温環境・密室ケアが伴う現場も、明確に「対象職場」として義務化の枠内に入ったのです。
訪問看護ならではの熱中症リスクとは?
訪問看護の現場は、病院や施設と異なり、環境が一律ではありません。
・エアコンがない/使われていない家庭
・リハビリや入浴介助による体温上昇
・ヘルメット+自転車での移動による体熱のこもり
・利用者自身が水分を摂取していないケース
たとえば、ある訪問看護師が訪れた98歳男性のケースでは、室温が高いにも関わらず水分を摂っておらず、体温が前日より1度上昇していました。
看護師は即座にスポーツドリンクを飲ませ、家族には「手足が冷たくても体に熱がこもっている場合がある」と注意喚起したそうです。
現場では、こうした環境リスク × 高齢者特性 × 看護内容が複雑に絡むため、独自のリスク管理が不可欠です。
義務化で何をしなければならない?具体的な対応内容
法律で求められている主な対応は、次の2点です。
■① 報告体制の整備と周知
熱中症の疑いがある職員や、異常に気づいた者がすぐに報告できる体制(担当者・連絡先)を定め、全職員に周知する必要があります。
誰に・どの手段で・どの段階で報告するかを明確にしておくことが重要です。
■② 重症化を防ぐための手順書の作成と周知
・異常があったら直ちにケア作業を中断
・冷却・水分補給を行う
・必要があれば搬送・医師の診察へ
これらの手順を文書で整備し、普段からの訓練や朝礼などで周知しておくことが求められています。
実際の現場ではどんな対策が行われているのか?
東京都足立区の「訪問看護ステーション ブロッサム」様では、以下のような現場対策が取られています。
・熱中症チェックリストと連絡体制の掲示
・凍ったタオルや冷却飲料の常備(冷凍庫を設置)
・東京都の補助金を活用して首かけ扇風機を購入
・ヘルメットに日よけをつけて自転車移動対策
現場の看護師は「風が首に当たると体が楽になる」と効果を実感しており、「職員を守ることは、利用者を守ること」という視点が根づいています。
このように、道具・環境・制度の三位一体で熱中症から職員と利用者の双方を守る努力が進んでいます。
情報収集・予防の習慣化もカギ
近年では、環境省の「熱中症予防情報サイト」やLINE通知サービスを活用し、毎朝の暑さ指数(WBGT)をチェックして職員に周知しているステーションも増えています。
・暑さ指数が高い日は訪問順を変更
・室温が高い家庭には早めに扇風機を設置
・水分摂取指導を丁寧に実施
こうした「見えない気温リスクへの可視化」が、日々の判断をサポートしています。
熱中症は“予防できる災害”。今こそ体制整備を
熱中症は「防げる事故」であり、「現場の工夫次第」で大きく被害を減らすことができます。
訪問看護という特性上、すべてのリスクを排除することは難しいですが、
・情報の共有体制
・職員の無理をさせない文化
・適切な物品と手順書の整備
これらの“現場を支える仕組み”を整えることで、夏の訪問業務の安全性は大きく向上します。
まとめ:今、事業所にできる第一歩は?
・連絡体制・緊急時の判断手順を紙にして掲示する
・職員の通勤・訪問用に冷却グッズや飲料を準備する
・暑さ指数のLINE通知を活用して気温に敏感になる
・“体調が悪い時は言っていい”文化を育てる
「熱中症対策は利用者の命を守ることに直結する」——そう言っても過言ではありません。
一つひとつの現場の声と対策が、業界全体の安全につながります。

